エッセイ
春風が吹きすさぶある日の午後のこと。
桜も散り始め、ようやく過ごしやすい気候になりはじめたので散歩がてら池上へと赴いた。
この街は『池上本門寺』を筆頭にお寺が多く建ち並び、お隣にはあの”蒲田”があるというのにとても静かだ。
この場所に来ると、なぜだか時の進みが穏やかに感じられるような気がする。
ところで、なぜ池上にはこんなにも『くず餅』のお店が多いのだろうか。
ふと疑問に思い調べてみると、どうやら池上は関東でくず餅が発祥した土地らしい。
なるほど、そういうことだったのか。
そんなことを調べていたら、案の定私の胃袋が甘味を求め始めてしまった。
よし、今日はくず餅を食べるしかない。
駅からほど近くの〔浅野屋本舗〕の看板が目に止まる。
あぁ、くず餅もいいけどあんみつも捨て難いなぁ。
とりあえず入店してから吟味しよう。
そして私はずっしりとした重みのある店のドアに手をかけた。
「いらっしゃいませ。」
明るく優しい声が店内に響いた。
席に案内されてメニューを開く。
さて、問題はくず餅とあんみつ、どちらにするかだ。
おや？…全部セット？
くず餅にアイスとあんこと白玉が乗っている。そんないいとこ取りのセットがあるだなんて！
私は迷わずそれを注文した。
運ばれてきたのは、まさしく和の宝石箱だった。
したたり落ちる黒蜜の艶やかさ、つやっとした光を放つ白玉、そしてそこに彩りを添える抹茶アイス。
全てが完璧だった。
優しく差し込む春の光を浴びながら私は和の宝石箱を堪能した。
春のよき日に、こんなにもおいしい贅沢ができるだなんて。
夫を連れて必ずまたここに来よう。
そう心に誓った。
〔浅野屋本舗〕アクセス・外観
最寄り駅は東急池上線の池上駅。
駅からは徒歩５分ほど。
池上駅から出てすぐのところに同じ名前の【浅野屋】というくず餅屋さんがありますが、今回ご紹介するお店とは異なるお店ですのでお間違いなく。
駅から池上本門寺方面に歩いていくと、木の引き戸がかわいらしい小さなお店が見えてきます。
お店の外にはテイクアウトでくずもちや、あんみつを購入できる窓口もあります。
利用はこちらの方が多い印象を受けます。
私は今回は喫茶利用をさせていただきました。
〔浅野屋本舗〕内観
中に入るとコンパクトながらも、４人掛けテーブルが４つ並んでいました。
目視で確認することはできなかったのですが、座敷席の用意もあるようです。
お土産用の甘味が並ぶショーケースもありますので、実際にいただいてからお気に入りの商品をお持ち帰りすることもできますね。
〔浅野屋本舗〕メニュー
シンプルなくずもちや、豆かん。
豪華なクリームあんみつも種類豊富に用意されています。
ドリンクメニューも用意されています。
独自のブレンドコーヒーも気になりますね。
和菓子に合うコーヒーだそうです。次回行った際は飲んでみたいな。
何を食べようか悩んだ挙句、くずもちもあんみつも両方食べたいわがままな要望を叶えてくれるメニューを見つけてしまいました。
くずもち6切れ、抹茶アイス、白玉、つぶあん、きな粉、黒みつがワンプレートに乗った豪華なセットです。
今回はこちらの くずもち全部のせ(760円) を注文しました。
ちなみに、抹茶アイスはバニラアイスに。つぶあんはこしあんへの変更が可能なようです。
運ばれてきたのは、まるで和の宝石箱。
白玉のぷっくり感、黒みつのつややかさ、抹茶アイスの目に幸せを運ぶ豊かな色彩、つぶあんのほっくりした豆の感じ。
『目で味わう』とはよく言いますが、まさにこのことなんだろうなと。
くずもちは、歯切れが良いのにもっちりしていて食べ応えがありました。
香ばしいきな粉と濃厚な甘さの黒みつがよくマッチしていて食べ進む手が止まりません。
きな粉は国産大豆を100パーセント使用。黒みつは秘伝のレシピで作られているそうですよ。
あんことの相性も抜群。
くずもちをあんこと一緒に食べることが初めてだったのですが、こんなにも相性がいいものなのかと、意外な発見でした。
くずもちを食べつつも、アイスとあんこを混ぜて食べてみたり、白玉に黒みつを絡めて食べてみたりと、様々な楽しみ方をこの一皿の中で味わえるのもこのメニューの醍醐味。
私のような欲張りな食いしん坊さんには、たまらない豪華なセットでした。
実はこのメニュー、外のおしながきには記載がなく、店舗内のメニューにのみ記載されていました。
気になった方は入店前に、ぜひ店員さんに直接聞いてみてください。
〔浅野屋本舗〕店舗詳細
住所：〒146-0082 東京都大田区池上４丁目３２−７
営業時間：9：30～19：00 ｜ 喫茶 10：00～17：30
定休日：不定休
1752年創業という非常に長い歴史を持つ〔浅野屋本舗〕さん。
池上にお越しの際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
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